
斜視の治し方は?治療法一覧:眼鏡・プリズム・訓練・注射・手術
斜視について、症状・相談先・治療の選択肢・費用や手続きを一般向けに整理したコラムです。
斜視と言われて調べ始めると、すぐに「手術」という言葉が出てきます。けれど実際には、手術以外にもいくつかの方法が知られていて、どれが検討されるかは斜視の種類やずれの大きさによって変わります。この記事では、選択肢がどう並んでいるのかを、優劣をつけずに整理します。
- 斜視の治療は、目的で分けると全体像がつかみやすくなります。
- ずれが小さい場合と大きい場合とで、検討される方法が変わります。
- 方法を比べた研究は、確かさの低い根拠が多いことも合わせて述べています。
斜視の治療は目的で分けると整理しやすい
治療法を並べただけでは、どれとどれが同じ土俵の話なのかが見えにくくなります。何のために行うのか、という目的で分けると整理しやすくなります。
目の位置を整える
右目と左目の視線が向く方向をそろえることを目的とするものです。ずれの大きさ(偏位量)と原因によって、眼鏡、注射、手術のどれが検討されるかが変わります。
両目で見る力を育てる・保つ
両眼視機能(りょうがんしきのう=両目で一つの像として見て、立体感や奥行き感を感じ取る働き)に関わる目的です。目の位置だけでなく、この働きが育つかどうかも合わせて見られます。
二重に見えるのを軽くする
複視(ふくし=ものが二つにだぶって見えること)への対応です。おとなでは、二つにものが見えたり、両目で見ようとするとはっきり見えなかったりするために、日常生活が困難になります。
眼鏡による治療
眼鏡は、視力を上げるためだけの道具ではありません。斜視の種類によっては、眼鏡そのものが目の位置に関わる治療になります。
調節性内斜視と遠視の眼鏡
調節性内斜視は、遠視の矯正眼鏡をかけると眼位のずれ(目の向きのずれ)がなくなる内斜視です。遠視があり、物をはっきり見ようとして調節(ピント合わせ)が過剰に働いたことによって生じます。発症は1歳6か月から3歳までが最も多くなっています。
眼鏡を作るときは、目の余分な力(調節力)を一時的に麻痺させる目薬を用いて屈折の度数を測り、その結果に基づいて処方します。1か月から3か月経過すると眼位が変化するため、眼科で指示された装用スケジュールを守ることになります。
プリズム(光学的療法)
外斜視では、偏位量が小さい場合に、プリズムという光学的療法が行われます。
部分調節性内斜視でも、残った内斜視の角度が小さい場合は、プリズムレンズを処方して、両方の眼で見る機能を養うことがあります。
視能訓練(目の使い方の訓練)
視能訓練は、視能訓練士(しのうくんれんし=目の検査と、小児の弱視・斜視の視能矯正を担当する国家資格の専門職)が関わって行われるものです。外斜視では、偏位量が小さい場合に、両眼視機能の働きを強化する視能訓練が行われます。
内容は検査の結果に基づいて決まるため、市販の教材やアプリを自己判断で使うのとは別のものです。
ボツリヌス毒素の注射
目を動かす筋肉にA型ボツリヌス毒素製剤を注射する方法です。斜視の治療の一つとして、手術と比べた研究が行われています。
斜視に対するボツリヌス毒素をまとめた系統的レビュー(成人と小児を含む4件の研究、242人)では、手術と比べた場合について、確かさの低い根拠にとどまるとしたうえで、斜視の型と年齢層をまとめて見ると手術のほうが望ましい可能性があると述べられています。また、後天性・乳児内斜視の子どもについては、両眼で一つに見る力の獲得に関して手術との間にほとんど差がない可能性があるという、これも確かさの低い根拠が示されています。
重い有害事象を報告した研究はありませんでしたが、注射を受けた人では部分的で一時的なまぶたの下がり(16.7〜37.0%)と、一時的な上下方向のずれ(5.6〜18.5%)が観察されています。日本では、A型ボツリヌス毒素製剤の「効能又は効果」に斜視が含まれています。ただし添付文書には、陳旧性(ちんきゅうせい=古くなった状態)の麻痺性斜視の改善には効果を有しないこと、50プリズムジオプトリーを超える斜視などでは安全性・有効性が確立していないことが記載されています。実際に対象になるかは状態によって異なるため、医療機関でご確認ください。
手術
外斜視では、偏位量が大きい場合に斜視手術が行われます。乳児(先天)内斜視でも、眼位ずれが大きいため、眼位をまっすぐにするには斜視手術が必要なことが多くなります。
「もどり」と再手術があることについて
外斜視の手術では、もどり(術後に再び外斜視となること)が出現する場合がしばしばみられるため、手術時期を含めた慎重な検討が必要とされています。
米国の大規模な診療データベースを用いた調査(2013〜2017年に行われた斜視手術が対象)では、再手術の割合が1年で5.61%、3年で8.53%、5年で10.13%と報告されています。年齢層別では、6歳から19歳の子どもで最も低い値でした。米国の医療制度のもとでの数字であり、個別の医療機関の成績を示すものではありません。
治療法を比べた研究は何を報告しているか
治療の方法を直接比べた研究は、数も規模も限られています。
間欠性外斜視への治療をまとめた系統的レビュー(6件の研究、890人。多くは12か月から10歳の子ども)では、アイパッチ(片目を隠す方法)を経過観察と比べた2件の統合で、6か月後の近見と遠見の目の位置について、アイパッチのほうが臨床的に良好だったとする確かさの高い根拠が示されています。一方、近見の立体視については、ほとんど差がないという確かさの低い根拠でした。手術の術式どうしの比較は、根拠が不十分で判断できないとされています。
間欠性外斜視の手術以外の方法を比べたネットワークメタ解析(11件の研究、1,411人)では、4つの方法が扱われました。この種の解析で示される順位は、治療法の優劣を示すものとしては扱いません。そのため、このページでは順位そのものを紹介していません。この研究のなかで、4つの方法はいずれも近見の立体視には有意な影響を与えなかったと述べられています。著者らは、重症度や特性、費用を踏まえて個別に方針を組み立てるべきだとしています。
乳児内斜視への治療をまとめた系統的レビューでも、手術の型や介入する時期をめぐる議論は根拠が不十分で解決できなかったと述べられています。「どれが一番か」に短く答えられる状態ではない、というのが現時点の文献の姿です。
治療の相談のときに整理しておきたい3つのこと
選択肢が複数あるということは、説明を聞く側にも整理する材料が要る、ということでもあります。
- いま何を目的にしているか:目の位置なのか、両目で見る力なのか、二重に見えることへの対応なのか。同じ「治療」でも目的が違えば方法も変わります
- その方法を選ぶ理由と、他の方法との関係:なぜいまその方法なのか、他の方法は今後の選択肢に残るのか。順番の話なのか、二者択一なのか
- そのあとの見通し:効果を確かめるのはいつか、変化があった場合にどうするか、通院はどのくらい続くか
この調査に回答した施設の一覧があります。回答していない施設にも斜視を診ている医療機関はあり、一覧は推薦ではありません。お住まいの地域の一覧はこちら(すべての医療機関は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)でも探せます)
よくある質問
手術をしないという選択もありますか
斜視の種類とずれの大きさによって、検討される方法は変わります。外斜視では、偏位量が小さい場合にプリズムという光学的療法や、両眼視機能の働きを強化する視能訓練が行われ、偏位量が大きい場合に斜視手術が行われます。どの段階でどれを考えるかは、検査の結果をもとに医療機関で相談することになります。
眼鏡をかけるだけで目の向きが変わることはありますか
調節性内斜視は、遠視の矯正眼鏡をかけると眼位ずれがなくなる内斜視です。遠視があり、物をはっきり見ようとして調節が過剰に働いたことで生じるため、その働きすぎを眼鏡で補う形になります。眼鏡を作る際は、調節力を一時的に麻痺させる目薬を用いて屈折の度数を測ります。
ボツリヌス毒素の注射はどんなものですか
目を動かす筋肉にA型ボツリヌス毒素製剤を注射する方法です。手術と比べた系統的レビューでは、確かさの低い根拠にとどまるとしたうえで、斜視の型と年齢層をまとめると手術のほうが望ましい可能性があると述べられています。一時的なまぶたの下がりや上下方向のずれが観察されています。日本では、A型ボツリヌス毒素製剤の「効能又は効果」に斜視が含まれています。ただし添付文書上、効果を有しないとされる状態や、安全性・有効性が確立していないとされる状態があるため、あてはまるかどうかは医療機関でご確認ください。
手術をしたら目の位置は戻らないのですか
外斜視の手術では、もどり(術後に再び外斜視となること)が出現する場合がしばしばみられ、手術時期を含めた慎重な検討が必要とされています。米国の診療データベースの調査では、斜視手術後の再手術の割合は1年で5.61%、3年で8.53%、5年で10.13%でした。米国の制度のもとでの数字で、個別の医療機関の成績ではありません。
参考にした資料
- 日本弱視斜視学会「外斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus2(2026年9月10日閲覧)
- 日本弱視斜視学会「内斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus3(同)
- 日本視能訓練士協会「視能訓練士とは?」 https://www.jaco.or.jp/ippan/about/(同)
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報 A型ボツリヌス毒素製剤 電子添文(2026年6月改訂・第4版) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1229404D2(2026年9月10日閲覧)
- Bort-Martí AR, et al. Botulinum toxin for the treatment of strabismus. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2023. PMID: 36916692
- Pang Y, et al. Interventions for intermittent exotropia. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2021. PMID: 34516656
- Song D, et al. Non-surgical therapy for intermittent exotropia: a systematic review and network analysis. BMC Ophthalmology, 2024. PMID: 39696091
- Mehner L, et al. Interventions for infantile esotropia. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2023. PMID: 36645238
- Repka MX, et al. Strabismus and Strabismus Surgery Reoperation Rates at 1, 3, and 5 Years: Analyses from the IRIS Registry. Ophthalmology, 2026. PMID: 40907579


