コクラン・レビュー(複数の研究をまとめたもの)

斜視治療におけるボツリヌス毒素(コクラン・システマティックレビュー)

Botulinum toxin for the treatment of strabismus. Cochrane Database Syst Rev 2023

本ページは、斜視に関する学術論文の紹介です。

Bort-Martí AR, Rowe FJ, Ruiz Sifre L、ほか/The Cochrane database of systematic reviews/2023年/PMID 36916692/DOI 10.1002/14651858.CD006499.pub5

要約

原文の要旨に書かれている範囲で、論文が述べている内容を独自の言葉でまとめたものです(原文の翻訳ではありません)。

目的

斜視の治療としてのボツリヌス毒素注射の効果を、手術やその他の保存的治療(訓練・プリズム・レンズなど)と比べて調べ、どの型の斜視でとくに有用かを明らかにすることを主な目的とし、用量による違いと合併症の頻度も調べることを目的としたレビューです。

方法

2022年7月6日に複数のデータベースと試験登録を検索し、ボツリヌス毒素と手術・代わりの薬剤・保存的治療を比べたランダム化比較試験を対象にしました。見つかった試験はすべて手術との比較で、コクランの標準的な方法で分析し、根拠の確実性を段階評価したと述べています。

結果

4本(合計242人。内斜視または外斜視の大人、後天性内斜視の子ども、乳児内斜視の子どもを含み、追跡は6〜36か月。スペイン2本、カナダ・南アフリカ各1本)が含まれ、すべての項目で偏りのリスクが低い研究はなかったとしています。斜視が改善・矯正された人の割合は、手術のほうが多い可能性があるが根拠の確実性は低かったと報告しています(リスク比0.72、95%信頼区間0.53〜0.99、4本・242人)。再治療が必要な子どもを対象にしたスペインの2本(102人)では、感覚性融像と立体視の達成に手術との差はほとんどない可能性があるとしています(確実性は低い)。ボツリヌス毒素群では一時的な眼瞼下垂(まぶたの下がり)が16.7〜37.0%、一時的な上下方向のずれが5.6〜18.5%にみられ、手術群の1本では44.7%に不快感が報告され、重い有害事象の報告はありませんでした。

結論

著者は、特定の型の斜視でボツリヌス毒素が手術の代わりになるかは確実性の低い根拠しかなく不明であると述べ、型と年齢を合わせた解析では手術のほうが望ましい可能性があるとしつつ、追加手術の必要性・生活の質・重い有害事象については結論を出せないとしています。進行中の3本の試験の結果が待たれ、今後の試験は生活の質と費用対効果も調べるべきだと述べています。

注記(この研究の限界)

海外(スペイン・カナダ・南アフリカ)の研究で、日本の保険診療で受けられる治療とは異なる場合があります。4本の試験は対象の年齢や斜視の型が異なり、それらを合わせた結果であるため、特定の型や年代にそのまま当てはめることはできません。著者自身が、根拠の確実性は低いまたは非常に低いと述べています。

用語の説明

ボツリヌス毒素
筋肉の働きを一時的に弱める薬剤で、斜視では目を動かす筋肉に注射して目の位置を調整する目的で使われます。
眼瞼下垂
まぶたが下がって目が開きにくくなる状態で、この研究では注射後に一時的に起こった例が報告されています。
感覚性融像
両目で見た像を脳で一つに合わせる働きのことで、両眼視の基本となる機能です。

読むときの注意

このページは論文の内容を紹介するもので、研究の良し悪しを評価したものではありません。数字や結果は原文の要旨に書かれた範囲で紹介しており、個別の症状の診断や治療の判断は、診察を担当する医師にご相談ください。正確な内容は原文(PubMed/出版社ページ)でご確認ください。

この調査結果の前提と注記

斜視手術件数 全国調査(2023–2025)/調査結果と施設の一覧。掲載内容は予告なく更新される場合があります。最終更新日:2026年11月4日

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