
斜視と弱視は別のもの。関係と、視力が育つ時期の目安
斜視について、症状・相談先・治療の選択肢・費用や手続きを一般向けに整理したコラムです。
健診で「斜視の疑い」と言われて調べていると、必ず「弱視」という言葉が出てきます。二つはよく並べて説明されるので、同じものだと受け取られがちですが、指しているものは違います。この記事では、斜視と弱視の違い、二つがつながることがある理由、そして「何歳まで」と言われる時期の意味を整理します。
- 斜視は目の向きの問題、弱視は視力の育ち方の問題です。
- 視力が伸びやすい感受性期は10歳頃までとされています。
- 弱視は3歳児健診や就学時健診で見つかることが多いです。
斜視と弱視の違い
斜視と弱視は、見ているところが違います。斜視は「目がどちらを向いているか」、弱視は「視力がどこまで育ったか」の話です。片方だけがある人も、両方がある人もいます。
斜視=目の向きの問題
斜視とは、右目と左目の視線が違う場所に向かっている状態のことです。視線がずれる方向によって、外斜視(外側)、内斜視(内側)、上下斜視と呼び分けます。いつもずれている恒常性(こうじょうせい)と、出るときと出ないときがある間欠性(かんけつせい)があります。
周りの人が写真や表情で気づきやすいのはこちらです。目の向きは外から見えるからです。
弱視=眼鏡をかけても視力が出にくい状態
弱視(じゃくし)は、斜視やピンぼけなどのために視力の発達がさまたげられて生じた低い視力のことで、眼鏡をかけても視力が十分に出ない場合を指します。視力の成長期に何らかの邪魔が入って正常な視力の成長が止まってしまい、眼鏡をかけてもよく見えない状態を、弱視と呼びます。
原因によって、次のように分けられています。
- 屈折異常弱視:遠視・近視・乱視が両目とも強い場合。最も多い原因は遠視です
- 不同視弱視:遠視・近視・乱視の左右差が強いために起こる、片目の視力の問題です
- 斜視弱視:斜視があるために片目の視力の発達がさまたげられるものです
- 形態覚遮断弱視:乳幼児期に光や形の情報がさえぎられる場合。先天白内障や眼窩腫瘍などが原因になります
片目だけの弱視は、もう片方の目でふつうに見えているため、本人が困らず、家庭で気づくきっかけも生まれにくくなります。斜視と違って外からは見えない、というのが弱視の分かりにくさです。
斜視から弱視につながることがある理由
子どもは視覚が発達している時期にあります。斜視弱視とは、斜視があるためにおこる、片目の視力成長障害です。
斜視のある目では、網膜の中心部分(中心窩=ちゅうしんか)で物を見ていないため、その目の視力が発達せず弱視になります。斜視が原因といっても、見た目にわからない程度の軽い斜視のこともあり、片目の視力は正常に発達しているため、周囲からは判りません。斜視が「見た目の話」だけで終わらないと言われるのは、この道すじがあるためです。
逆の順序もあります。乳幼児期に光や形の情報がさえぎられて起こる形態覚遮断弱視では、感覚性斜視を伴うことがあります。
視力が育つ時期の目安
「何歳まで」という言葉が出てくるのは、視力が伸びる時期に限りがあるためです。
感受性期(視力が伸びやすい時期)の目安
生まれたばかりの赤ちゃんの視力は約0.1で、3歳ごろに大人と同じ視力に達します。視力が育つ臨界期(感受性期)は10歳頃までとされ、この時期を過ぎると治療に反応しにくくなるとされています。
10歳という数字は、その日を境に何かが切り替わるという意味ではありません。伸びやすい時期がだんだん終わっていく、その目安として示されている年齢です。
「何歳まで」を一律に決められない理由
弱視は除外診断と呼ばれ、他に目の病気がなにもないと確認することが重要とされています。そのため、しっかり検査できる年齢になるまで本当に弱視と判断することは難しく、視力検査だけで弱視と判断するわけではありません。屈折検査や斜視検査などを総合的に判断して、弱視になる可能性が非常に高いと判断すると、予防的に治療を開始します。
また、斜視の治療をいつ行うのがよいかについても、研究の結論は出ていません。乳児内斜視への治療をまとめた系統的レビューでは、手術の種類、手術以外の方法、治療を行う年齢をめぐる議論は、根拠が十分でないため決着していないと述べられています。
「予防」という言葉で調べられることが多いのですが、弱視は視力の発達が十分に進まない状態を指します。3歳児健康診査には視覚の検査が含まれ、弱視は3歳児健診や就学時健診で見つかるケースが多いとされています。
弱視の治療として一般に行われていること
弱視の治療は、原因によって組み合わせが変わります。一般に挙げられるのは次のものです。
- 眼鏡の装用:屈折異常弱視では、目に合った眼鏡をかけることが基本になります。度数は目薬を点眼して調べます
- 健眼遮閉(けんがんしゃへい):よく見えるほうの目をアイパッチなどで隠し、弱視の目を使わせる方法です
- 薬剤(アトロピン)の点眼:よく見えるほうの目のピント合わせを一時的に弱め、弱視の目を使わせる方法です
- 斜視手術:斜視弱視では、固視(じっと見つめること)が正常になったあとに、遮閉や点眼、斜視手術が行われることがあります
治療の目標は、眼鏡をかけて1.0の視力が出ることとされています。どの方法をどの順で行うかは、弱視の原因と程度によって変わるため、検査の結果をもとに決められます。
健診で見つかるしくみ(3歳児健診・就学時・学校健診)
弱視は、3歳児健診や就学時健診で見つかるケースが多いとされています。本人が困らないぶん、家庭で気づく手がかりが少ないためです。
3歳児健康診査の視覚検査は三つの段階に分かれています。
- 一次検査:家庭で行う視力検査とアンケートです。それぞれの目が0.5見えているか、目のことで気になる点はないかを確かめます
- 二次検査:市区町村の指定会場で、問診と視力検査に加えて、オートレフラクトメータやフォトスクリーナー(目に光を当てて度数を測る機器)による屈折検査や、両眼視機能の検査を併用することが望ましいとされています
- 眼科精密検査:二次検査で要精密検査と判定された場合に行われます
一次検査は保護者が行うため、手順どおりに測り、結果を丁寧に記入することが検出の精度に関わります。その後も、学校保健安全法にもとづく健康診断が続きます。
大人になってから知ったときに考えられること
片目だけの弱視は、もう片方の目の視力が正常に発達しているため周囲からは判らず、大人になってから知る方がいます。日本の公的医療保険の請求データを用いた全国調査では、斜視の有病率は学齢期と高齢期に高い二つの山がありました。斜視そのものは、子どもの時期に限った状態ではありません。
感受性期を過ぎたあとの視力については、治療に反応しにくくなるとされています。一方で、斜視は目の向きの問題、弱視は視力の育ち方の問題であり、大人になってからの対応もそれぞれ別に考えられます。
保護者が記録しておくと役立つこと
次の3つがそろっていると、診察で状況が伝わりやすくなります。
- 健診の書類:3歳児健診の一次検査の記録、二次検査や精密検査の結果、学校健診の視力の記録。年ごとに残しておくと変化が読み取れます
- 家庭で気づいたこと:片目をつぶる、顔を傾ける、目を近づけて見る、といった様子と、それが出やすい場面
- 家族の目のこと:家族に斜視や強い遠視、弱視の人がいるかどうか
眼鏡やアイパッチを使っている場合は、使えた時間やいやがった場面も書き留めておくと、続け方の相談がしやすくなります。
この調査に回答した施設の一覧があります。回答していない施設にも斜視を診ている医療機関はあり、一覧は推薦ではありません。お住まいの地域の一覧はこちら(すべての医療機関は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)でも探せます)
よくある質問
斜視があると必ず弱視になりますか
いいえ。斜視弱視は、斜視があるためにおこる片目の視力成長障害です。斜視のある目では網膜の中心部分(中心窩)で物を見ていないため、その目の視力が発達せず弱視になります。斜視が原因といっても、見た目にわからない程度の軽い斜視のこともあります。
弱視は何歳まで治療できますか
視力が育つ臨界期(感受性期)は10歳頃までとされ、この時期を過ぎると治療に反応しにくくなるとされています。ただし弱視は除外診断と呼ばれ、視力検査だけで判断するわけではなく、屈折検査や斜視検査などを総合的に判断して方針が決められます。個々の見通しは検査の結果をもとに診察で扱われます。
弱視は家庭で見つけられますか
片目だけの弱視は、もう片方の目で見えているため本人が困らず、家庭では気づきにくいとされています。3歳児健診の一次検査は家庭で行う視力検査で、それぞれの目が0.5見えているかを確かめるものです。手順どおりに測って結果を記入することが、見つけるための機会になります。
弱視の眼鏡はずっとかけ続けるのですか
屈折異常弱視では、目に合った眼鏡をかけることが治療の基本になります。度数は目薬を点眼して調べ、成長にともなって変わるため定期的に確かめます。治療の目標は眼鏡をかけて1.0の視力が出ることとされており、眼鏡を外せるかどうかは原因と経過によって変わります。
参考にした資料
- 日本弱視斜視学会「弱視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/amblyopia(2026年9月10日閲覧)
- 日本弱視斜視学会「斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus(同)
- 日本弱視斜視学会「内斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus3(同)
- 日本弱視斜視学会「3歳児健康診査における視覚検査について」 https://www.jasa-web.jp/general/about-3sai(同)
- 日本弱視斜視学会「3歳児健診のご案内」 https://www.jasa-web.jp/general/3sai-guide(同)
- 文部科学省「児童生徒等の健康診断マニュアル・関係通知」 https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1383847.htm(同)
- Mehner L, Ng SM, Singh J. Interventions for infantile esotropia. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2023. PMID: 36645238
- Miyata M, et al. Prevalence and Incidence of Strabismus by Age Group in Japan: A Nationwide Population-Based Cohort Study. American Journal of Ophthalmology, 2024. PMID: 38040322


