夕方のリビングのソファで、女の子が両手でかたちを作りながら父親に話し、父親が目線を合わせて聞いている

斜視の見え方、本人にはどう見えている?

斜視について、症状・相談先・治療の選択肢・費用や手続きを一般向けに整理したコラムです。

お子さんの目がときどき外を向いているように見える。自分の目が疲れると、物が二つに見える。そんなとき、いちばん知りたいのは「本人にはどう見えているのか」だと思います。この記事では、二重に見える、片目で見ると楽、奥行きがつかみにくい、という三つの見え方に分けて整理します。

  • 斜視の見え方は一つではなく、年齢と斜視の種類で変わります。
  • 子どもは脳が片方の像を抑えるため、二重に見えると訴えないことがあります。
  • 大人は物が二重に見える、両目で見るとはっきり見えないなど、見え方の変化として自覚します。

斜視の見え方は一つではない

斜視とは、右目と左目の視線が違う場所に向かっている状態のことです。二つの目から届く像の位置がそろわないため、脳がその像をどう受け取るかによって、本人の見え方は変わります。同じ「斜視」でも、二重に見える人、二重には見えない人、奥行きだけがつかみにくい人がいます。

見え方は外からは見えません。周りの人が気づく「目線がずれている」という見た目と、本人が感じている見え方は、別のものとして分けて考えると整理しやすくなります。

机の上の同じコップを三通りに描き分け、輪郭が二つに分かれた状態、片方が薄くなった状態、奥行きの目安線がつかみにくい状態を横に並べた図
見え方は3つに分けて考える。二重に見える(複視)、片方の像を脳が抑える(抑制)、奥行きがつかみにくい(立体視の低下)です。

二重に見える(複視)

複視(ふくし)は、ものが二つにだぶって見える症状です。外斜視が出ているときには、片目でしかものを見ていないか、二つにものが見えています。

複視は、成人の斜視で現れる症状の一つです。出るときと出ないときがある間欠性(かんけつせい)の外斜視では、疲れているときや体調が悪いとき、眠いときに外斜視が出やすくなります。

片方の目の像を脳が抑える(抑制)

子どもの場合、ずれた目から届く情報を脳が消してしまうことがあります。これを抑制(よくせい)といいます。小児では、二つに見える(複視)と訴えることは少なくなります。

ただし、抑制が働いている間は片方の目の情報が使われていません。恒常性(こうじょうせい)の外斜視で片目だけで生活している状態では、立体視や3Dの感覚は失われます。二重に見えないことと、両目が使えていることは、同じではありません。

奥行きがつかみにくい(立体視の低下)

両眼視機能(りょうがんしきのう)は、立体感や奥行き感など、3Dを感じ取る能力のことです。両目の視力や目の向きがそろっていないと、この働きは不完全になります。

本人にとっては「見えないもの」ではなく「距離がつかみにくいもの」として現れます。

子どもと大人で見え方が違うところ

子どもは視覚が発達している途中にあります。この時期に斜視があると、両眼視機能が育たなかったり、弱視になったりすることがあります。ずれた方の目の像を感じないようにする抑制も起こることがあり、その場合は複視の訴えが出にくくなります。

大人では、外斜視が出ているときに物が二重に見えたり、両目で見ようとするとはっきり見えなかったりして、日常生活に支障が出ることがあります。急に発症する急性内斜視(成長してから起こる内斜視の一つ)でも、成人では複視を訴えることがあります。

間欠性外斜視は、疲れているとき、体調が悪いとき、眠いときに出やすくなります。間欠性外斜視から恒常性に移行する場合もあります。

生活の場面でのあらわれ方

見え方は言葉になりにくいため、生活の中の「やりにくいこと」として現れることがあります。

三つの場面。公園でボールを受けそこねる男の子、階段で手すりに手をかける子と支える祖父、夕方の食卓で目をこする子を横に並べた図
生活で気づきやすい場面。ボール遊び、階段の上り下り、夕方・疲れたときです。

ボール遊びや階段

間欠性外斜視では両眼視機能が低下し、ボール遊びや平均台などが苦手になります。飛んでくるボールとの距離や平均台の高さは、奥行きの情報を使う場面です。

疲れたときや起床直後

間欠性外斜視は、疲れやすく、体調が悪いときや眠いときに外斜視が出現します。とくにまぶしいと両目を合わせにくくなるため、屋外で片目をつぶりやすくなります。起床直後にも出やすくなります。基本の目の位置は外側を向いているため、ふだんは無意識に目に力をいれて、外斜視にならないよう努力しています。

家庭で気づいた時間帯や場面をメモしておくと、診察での説明に使えます。

見え方と見た目の両方を、周りはどう受け止めやすいか

周りの人の目に入るのは見た目のずれで、本人が感じているのは見え方です。この二つがずれていると、「見た目は気にならないから何もしなくていい」「見た目さえ整えばいい」というように、どちらか一方だけの話になりがちです。

斜視の心理社会的な面をまとめたレビューで、著者は、斜視が日常の活動を行う力をさまたげ、幸福感に影響する可能性があること、自己イメージの難しさを抱える人がいることを挙げ、治療は美容目的にとどまるものではなく、心理社会的な健康と生活の質を改善する可能性をもつと述べています。これは著者の見解であり、どの人にどの治療が向くかを示したものではありません。

周りの人にできることは、見た目を評価することではなく、見え方を本人の言葉で聞いてみることです。「二つに見える?」だけでは答えにくいので、「近くと遠く、どっちが見づらい」「疲れた時どうなる」のように場面を分けて尋ねると、言葉になりやすくなります。

診察のときに伝えると話が進みやすい「見え方の言葉」

診察では、片目ずつ隠して目の動きを見る遮閉試験(しゃへいしけん)のほか、視力、屈折(ピントの度数)、目の動きの検査が行われます。そこに本人の見え方の情報が加わると、状況が伝わりやすくなります。

  1. どう見えるか:二つに見える/ぼやける/片目を閉じると楽になる/距離がつかみにくい。どれに近いかを言葉にしておきます
  2. いつ、どんなときに:夕方、長く読んだあと、屋外、眠いとき、近くを見るとき。出やすい時間帯と場面を添えます
  3. 困っている場面:階段、運転、板書、細かい作業、人の顔を見るとき。生活のどこで支障が出ているかは、見え方の説明そのものになります
四枚の札を横に並べ、その下で子どもが話し、母親と視能訓練士が聞いている診察室の図
見え方を伝える言葉。二つに見える、ぼやける、片目を閉じると楽になる、距離がつかみにくい、のどれに近いかを言葉にしておきます。

お子さんの場合は、本人の言葉に加えて、片目をつぶる・顔を回して片方の目で見るといった様子と、正面から撮った写真を時期ごとに数枚持っていくと、経過が伝わりやすくなります。

この調査に回答した施設の一覧があります。回答していない施設にも斜視を診ている医療機関はあり、一覧は推薦ではありません。お住まいの地域の一覧はこちら(すべての医療機関は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)でも探せます)

よくある質問

斜視があると必ず二重に見えますか

いいえ。二重に見える複視が起こる人もいれば、脳が片方の像を抑える抑制が働いて二重には見えない人もいます。抑制は子どもで働きやすく、大人になってから生じた斜視では複視として自覚されることが多くなります。二重に見えないことは、両目が使えていることを意味するわけではありません。

子どもは自分から見え方を訴えますか

訴えないことが多いです。小児では二つに見えると訴えることは少なく、ずれた目の情報を脳から消去してしまう抑制が起こるためです。「見えにくい?」と聞くより、階段、ボール遊び、板書のように場面を挙げて、やりにくいことがないかを尋ねるほうが、言葉になりやすくなります。

片目をつぶるのはなぜですか

間欠性外斜視では、まぶしいと両目を合わせにくくなるため、屋外で片目をつぶりやすくなります。つぶる側の目や、つぶる場面(屋外か、近くを見るときか)は、診察で伝えておくと役立つ情報です。

立体視が低下すると生活にどう影響しますか

距離や奥行きをつかむ場面で現れます。両眼視機能が低下すると、ボール遊びや平均台などが苦手になります。恒常性外斜視で片目だけで生活している状態では、立体視や3Dの感覚は消失します。

参考にした資料

この調査結果の前提と注記

斜視手術件数 全国調査(2023–2025)/調査結果と施設の一覧。掲載内容は予告なく更新される場合があります。最終更新日:2026年11月4日

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