
斜視の症状を子ども・大人・高齢者に分けて整理する
斜視について、症状・相談先・治療の選択肢・費用や手続きを一般向けに整理したコラムです。
写真の目線がそろっていない気がする。夕方になると物が二重に見える。「これは斜視なのだろうか」と調べ始めたとき、まず知りたいのは、年代ごとにどんな場面で気づかれることが多いのか、という全体像だと思います。この記事では、子ども・大人・高齢の方に分けて整理します。
- 斜視は、右目と左目の視線が別の場所に向いている状態です。
- 子どもはずれた目の情報を脳が消してしまう抑制が起こり、大人は物が二重に見えるなど見え方の変化を自覚します。
- 日本の斜視の有病率は2.154%で、学齢期と75歳以上に山があります。
斜視とは(目の向きがそろわない状態)
斜視とは、右目と左目の視線が違う場所に向かっている状態のことです。ふだんは両目で同じ場所を見ているのに、片目ずつ隠して調べると視線がずれている状態は斜位(しゃい)といい、わずかな斜位はほとんどの人にあります。
斜視は見た目だけの問題ではなく、両眼視機能(りょうがんしきのう=両目で一つの像として見て、奥行きをとらえる働き)にも関わります。子どもは視覚が発達する時期にあたるため、両眼視機能が育たなかったり、弱視(じゃくし=視力の発達が十分に進まない状態)になったりすることがあります。
外斜視・内斜視・上下斜視の分け方
視線がずれる方向で、次のように呼び分けます。
- 外斜視:片方の目の視線が外側(耳側)に向かう
- 内斜視:片方の目の視線が内側(鼻側)に向かう
- 上下斜視:片方の目の視線が上または下にずれる
- 回旋斜視(かいせんしゃし):目が回転する方向にずれる
いつもずれている状態は恒常性(こうじょうせい)、出るときと出ないときがある状態は間欠性(かんけつせい)と呼びます。
見かけだけの斜視(偽斜視)
見かけ上は視線がそれているように見えて、実際には両目の視線がそろっている状態を、偽斜視(ぎしゃし)と呼びます。赤ちゃんは目頭の皮膚で内側の白目が隠れ、目が内側に寄って見えることがあり、本当の斜視との区別は眼科医でも難しいことがあります。フラッシュをたいて正面から撮った写真で、両目の黒目の同じ位置に反射光が見えれば偽斜視の可能性が高い、という目安があります。ただし、光の反射だけでは正確な目の位置は分かりません。偽斜視と思われた赤ちゃんに、あとから調節性内斜視が見つかることもあります。気になるときは、写真を持って眼科で確かめてください。
子どもで気づかれやすい場面
子どもでは、ずれた方の目で見ている像を感じないようにする抑制(よくせい)が起こることがあります。子どもの斜視は、写真の写り方や日常の様子から、周りの人が気づくことがあります。
写真で目線が合わない
正面から撮った写真で、片方の目だけ視線が別の方向を向いている。保護者の方が気づくきっかけになることがあります。乳児(先天)内斜視は生後6か月以内に発症する内斜視で、右目と左目が交代で内側に寄ることがあります。1歳以上で初めて診察を受けるときは、生後すぐの写真が発症時期の確認に役立ちます。写真は、偽斜視の目安にも「いつから」を伝える材料にもなります。
屋外で片目をつぶる
間欠性外斜視は、疲れているとき、起床直後、明るい屋外で出やすくなります。まぶしいと両目を合わせにくくなるため、屋外で片目をつぶりやすくなります。両眼視機能が低下すると、ボール遊びや平均台が苦手になることもあります。
健診で言われた
3歳児健診は、市町村が母子保健法に基づいて行う健康診査です。視覚検査は、家庭で行う一次検査、保健センター等で行う二次検査、眼科での精密検査という三段階で行われます。一次検査は、左右の視力が0.5あるかどうかと、目で気になることがあるかどうかを家庭で調べ、その結果を二次検査に持参するものです。二次検査で治療が必要な目の病気が疑われたときは、「3歳児精密検査受診票」が発行され、眼科での精密検査を受けることになります。受診票を受け取ったときは、健診の書類と、家庭で気づいていたこと(写真、片目をつぶる場面など)をあわせて持っていくと、診察で状況が伝わりやすくなります。
大人で気づかれやすい場面
大人は、外斜視が出ているときに物が二重に見えたり、両目で見ようとするとはっきり見えなかったりして、日常生活に支障が出ることがあります。
二重に見える・疲れたときに出やすい
複視(ふくし=一つの物が二つに見えること)は、大人の斜視で現れる症状の一つです。間欠性外斜視は、疲れているとき、体調が悪いとき、眠いときに外斜視が出やすくなります。間欠性外斜視から恒常性に移行する場合もあります。
急に始まった内斜視
急性内斜視は、成長してから起こる内斜視(後天性内斜視)のうち突然発症するもので、成人では複視を訴えることがあります。原因がはっきりしないこともある一方、器質的疾患(きしつてきしっかん=体の組織そのものに原因がある病気)を伴うことがあり、MRI(磁気を使って体の中を撮影する画像検査)などによる検査が行われます。大人の内斜視の原因には脳の異常、血管の異常、けが、近視の進行、加齢が挙げられ、徐々に起こる内斜視では見え方の異常に気づかないことがあります。
高齢の方に多いとされる斜視
成人では糖尿病、高血圧、脳の異常や頭のけがなどによって急に斜視が起こることがあり、その場合は複視が現れます。
日本の全国調査では、上下・回旋方向の斜視の割合が18歳以下では1.4%、18歳を超える年代では10.2%でした。また、有病率には学齢期と高齢期(特に75歳以上)に高い二つの山がありました。斜視があると、精密な立体感覚や奥行き感が低下します。
日本ではどのくらいの人にあるのか
有病率(ゆうびょうりつ=調べた集団のうち、その状態がある人の割合)は、調べる地域・年代・方法で数字が変わります。ここでは原文の数字のまま並べ、「多い・少ない」の評価は添えていません。
全国の保険データによる割合
日本の公的医療保険の請求データ(レセプト=医療機関が保険に請求する明細)を用いた全国調査では、2019年時点の斜視の有病率は2.154%(2,709,207人/125,708,000人)で、学齢期と高齢期(特に75歳以上)に高い二つの山がありました。内訳は外斜視67.3%、内斜視26.0%、上下・回旋方向の斜視6.7%です。外斜視の割合が高いことについて、著者らは日本人と他の民族との遺伝的な違いを示す可能性を挙げています。
世界の調査との比べ方
世界の56本の研究(合計229,396人)をまとめた研究では、斜視全体の有病率は1.93%、外斜視は1.23%、内斜視は0.77%と推定され、地域や年齢によるばらつきが大きいという結果でした。
子どもを対象にした海外の調査では、香港の6〜8歳の児童4,273人で有病率3.11%(95%信頼区間2.59〜3.63%。外斜視2.74%、内斜視0.28%)、シンガポールの生後6〜72か月の子ども3,009人で0.80%(95%信頼区間0.51〜1.19%。外斜視の63%が間欠性)でした。95%信頼区間は推定の幅を示します。いずれも対象年齢と地域が異なり、日本の制度や環境と異なる場合があるため、そのまま比べることはできません。
診察のときに伝えると話が進みやすいこと
診察では、片目ずつ隠して目の動きを見る遮閉試験(しゃへいしけん)のほか、視力、屈折(ピントの度数)、目の動きの検査が行われます。次の3つを整理しておくと、話が進みやすくなります。
- いつから、どんなときに:気づいた時期と、ずれや二重見えが出やすい場面(疲れたとき、屋外、近くを見るとき、夕方など)。急に始まったのか、徐々にかも添えます
- 写真:正面から撮った写真を、時期ごとに数枚。乳児期の写真は発症時期の確認に役立ちます
- 体の状態と持病:大人・高齢の方は、糖尿病や高血圧の有無、頭のけがの経験、飲んでいる薬。お子さんは、健診の書類と、片目をつぶる・顔を回して片方の目で見るなどの様子
この調査に回答した施設の一覧があります。回答していない施設にも斜視を診ている医療機関はあり、一覧は推薦ではありません。お住まいの地域の一覧はこちら(すべての医療機関は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)でも探せます)
よくある質問
子どもの斜視は自然に治りますか
偽斜視は、見かけ上は視線がそれているように見えて、実際には両目の視線がそろっている状態です。視線が実際にずれている斜視は種類ごとに経過が異なり、間欠性外斜視には外斜視が出るときと出ないときがあります。偽斜視と本当の斜視の区別は眼科医でも難しいことがあり、遮閉試験などの検査で調べられます。
大人になってから斜視になることはありますか
あります。成人では糖尿病、高血圧、脳の異常や頭のけがなどをきっかけに急に斜視が起こり、物が二重に見えることがあります。間欠性外斜視は、疲れているときや体調が悪いときに外斜視が出やすく、恒常性外斜視に移行する場合もあります。
斜視と弱視は同じですか
別のものです。斜視は右目と左目の視線がそろわない、目の向きの問題です。弱視は視力の発達が十分に進まない状態を指します。ただし子どもは視覚が発達する時期にあるため、斜視があると両眼視機能が育たなかったり弱視になったりすることがあります。
斜視は何科に相談しますか
斜視の診察は眼科で行われます。診察では、片目ずつ隠して目の動きを見る遮閉試験のほか、視力、屈折(ピントの度数)、目の動きの検査があります。急に始まった内斜視では、器質的疾患の有無を調べるためにMRIなどの検査が行われることがあります。
参考にした資料
- 日本弱視斜視学会「斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus(2026年9月9日閲覧)
- 日本弱視斜視学会「偽斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus1(同)
- 日本弱視斜視学会「外斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus2(同)
- 日本弱視斜視学会「内斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus3(同)
- 日本弱視斜視学会「3歳児健康診査における視覚検査について」 https://www.jasa-web.jp/general/about-3sai(2026年9月10日閲覧)
- 日本弱視斜視学会「3歳児健診のご案内」 https://www.jasa-web.jp/general/3sai-guide(同)
- Miyata M, et al. Prevalence and Incidence of Strabismus by Age Group in Japan: A Nationwide Population-Based Cohort Study. American Journal of Ophthalmology, 2024. PMID: 38040322
- Hashemi H, et al. Global and regional prevalence of strabismus: a comprehensive systematic review and meta-analysis. Strabismus, 2019. PMID: 31012389
- Prevalence of strabismus and its risk factors among school aged children: The Hong Kong Children Eye Study. 2021. PMID: 34226578
- Prevalence of amblyopia and strabismus in young singaporean chinese children. 2010. PMID: 20207979

