
斜視は何科?赤ちゃん・子ども・大人で違うのか
斜視について、症状・相談先・治療の選択肢・費用や手続きを一般向けに整理したコラムです。
健診で目のことを言われた。写真で目線が合っていない気がする。急に物が二つに見えるようになった。そんなとき、まず迷うのが「眼科なのか、小児科なのか、脳の科なのか」という点だと思います。この記事では、年代ごとにどの科と職種が関わるのかを整理します。
- 斜視の診察は、赤ちゃんから大人まで、いずれも眼科で行われます。
- 眼科には視能訓練士という、目の検査と訓練を担当する国家資格の専門職がいます。
- 大人で急に二重に見えたときは、原因を調べるためにMRIなどの検査が行われることがあります。
斜視の診察を担うのは眼科
斜視は、右目と左目の視線が違う場所に向かっている状態です。目の位置、目の動き、両目で見る力を専用の検査で調べる必要があるため、診察を担うのは眼科になります。年齢によって担当する科が入れ替わるわけではなく、赤ちゃんも高齢の方も、目そのものを見るのは眼科です。
診察では、片目ずつ隠して目の動きを見る遮閉試験(しゃへいしけん)のほか、視力、屈折(ピントの度数)、目の動き、両眼視機能(りょうがんしきのう=立体感や奥行き感を感じ取る働き)の検査が行われます。
眼科のなかの「斜視・弱視」の分野
斜視と弱視(じゃくし=視力の発達が十分に進まない状態)は、眼科のなかの一つの分野です。日本弱視斜視学会は、弱視・斜視を専門とする医師の一覧を公開しています。
視能訓練士という専門職
眼科で目の検査を担当するのが視能訓練士(しのうくんれんし)です。小児の弱視や斜視の視能矯正と、視機能の検査を行う国家資格をもつ専門技術職で、1971年(昭和46年)の視能訓練士法によって定められました。
視能訓練士の業務分野は、斜視・弱視の視能訓練のみを扱っていた創生期から、眼科一般分野での幅広い視能検査へと広がっています。眼科を探すときに「視能訓練士がいるか」を確かめる方がいるのは、この検査を担う職種だからです。ただし在籍の有無は医療機関の体制の話であり、診療の優劣を示すものではありません。
赤ちゃんの場合(健診で言われたとき)
赤ちゃんの目のずれは、本当の斜視のこともあれば、見かけだけのこともあります。どちらなのかを分けるところから、診察は始まります。
見かけだけの斜視(偽斜視)との区別
見かけ上は視線がそれて斜視のように見えても、実際には両目の視線がそろっている状態を偽斜視(ぎしゃし)といいます。赤ちゃんの目は目頭の皮膚のために内側に寄って見えやすく、本当の斜視と偽斜視の区別は眼科医でも困難なことがあります。
家庭での目安として、フラッシュをたいてカメラ目線の写真を撮り、両目の黒目のなかの同じ位置に反射光が確認できれば偽斜視の可能性が高い、という見方があります。これは気づくための目安で、判定は診察で行われます。偽斜視と思われた赤ちゃんに、あとから調節性内斜視が見つかることもあります。
一方、生後6か月以内に発症する内斜視は乳児(先天)内斜視と呼ばれ、片方の目が内側に大きくずれ、右目と左目が交代することもあります。いつから見られたかが診断の手がかりになるため、生後すぐの写真が役に立ちます。
乳幼児健診・3歳児健診とのつながり
母子保健法第12条により、1歳6か月児と3歳児の健康診査は市町村に義務づけられています。
健診の書類は診察でそのまま資料になるので、持参すると話が早くなります。
子どもの場合(学校健診で言われたとき)
園や学校での健康診断は、学校保健安全法にもとづいて行われます。目のことを指摘されたときも、目そのものを調べるのは眼科です。
小児は視覚の発達期にあたり、この時期に斜視があると、両眼視機能が育たなかったり、弱視になったりします。家庭で気づいていたこと、たとえば顔を回して片方の目で見るといった様子は、検査の結果と合わせて意味をもつ情報になります。
なお、眼鏡店や視力トレーニングをうたう民間のサービスは、医療機関の検査とは別のものです。学校健診で指摘された内容を確かめる場としては、眼科の検査が前提になります。
大人で急に二重に見えるようになった場合
大人になってから物が二つに見えるようになった場合も、最初に目の状態を調べるのは眼科です。ただし、この場面では眼科だけで完結しないことがあります。
目の検査と、原因を調べる検査
急性内斜視は、成長してから起こる内斜視(後天性内斜視)のうち突然発症するもので、成人では複視(ふくし=ものが二つにだぶって見えること)を訴えることがあります。原因がはっきりしないこともある一方、器質的疾患(きしつてきしっかん=体の組織そのものに原因がある病気)を伴うことがあり、MRI(磁気を使って体の中を撮影する画像検査)などによる検査が行われます。
大人の内斜視の背景としては、脳の異常、血管の異常、けが、近視の進行、加齢が挙げられます。徐々に起こる内斜視では、見え方の異常に気づかないことがあります。
成人では、糖尿病、高血圧、脳の異常や頭のけがなどによって急に斜視が起こることがあり、その場合は複視が現れます。
何科に行くかより先に、伝えておくと役立つこと
科を選ぶことより、手元の情報を整理しておくほうが、実際の診察では役に立ちます。次の3つは、どの年代でも共通して使えます。
- いつから、どんなときに:気づいた時期と、ずれや二重見えが出やすい場面(疲れたとき、屋外、近くを見るとき、夕方など)。急に始まったのか、徐々にかも添えます
- 写真と書類:正面から撮った写真を時期ごとに数枚。お子さんは乳児期の写真と、健診や学校健診で渡された用紙
- 体の状態と持病:糖尿病、高血圧、頭のけがの経験、飲んでいる薬。大人で急に始まった場合は、原因を調べるうえで手がかりになります
見た目のことと見え方のこと、どちらを話してよいか迷う方もいます。心理社会的な理由で斜視手術を受けた英国の成人13名に術後の受け止めを聞いた研究では、見え方や作業のしやすさ、体の症状、自信や気持ちの面での変化が語られました。効果を測定した研究ではありませんが、見た目と見え方は本人のなかで切り離されていないことがうかがえます。相談の場では、両方を話して差し支えありません。
この調査に回答した施設の一覧があります。回答していない施設にも斜視を診ている医療機関はあり、一覧は推薦ではありません。お住まいの地域の一覧はこちら(すべての医療機関は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)でも探せます)
よくある質問
赤ちゃんの目のずれも眼科でみてもらえますか
はい。赤ちゃんも眼科の対象です。生後6か月以内に発症する乳児内斜視と、見かけだけの偽斜視があり、その区別は眼科医でも難しいことがあるため、検査で確かめることになります。フラッシュ写真で両目の黒目の同じ位置に反射光が写るかどうかは家庭で気づくための目安で、判定は診察で行われます。
小児科ではなく眼科なのはなぜですか
斜視の診察では、遮閉試験や屈折検査など、目の位置と両目で見る力を調べる専用の検査を使うためです。乳幼児健診は母子保健法、園や学校の健康診断は学校保健安全法にもとづく制度で、目そのものを調べるのは眼科です。入れ替わりではなく、役割の違いです。
視能訓練士は何をする人ですか
目の検査と、弱視や斜視の視能矯正を担当する国家資格の専門職です。視力、屈折、目の動き、両眼視機能などの検査を行います。1971年(昭和46年)の視能訓練士法にもとづく資格です。
大人の斜視も眼科でよいですか
目の検査を行うのは大人も眼科です。ただし急に二重に見えるようになった場合は、体の組織に原因がある病気を伴うことがあり、MRIなどによる検査が行われることがあります。
参考にした資料
- 日本弱視斜視学会「斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus(2026年9月10日閲覧)
- 日本弱視斜視学会「偽斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus1(同)
- 日本弱視斜視学会「内斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus3(同)
- 日本弱視斜視学会「専門用語の説明」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/terminology_explain(同)
- 日本視能訓練士協会「視能訓練士とは?」 https://www.jaco.or.jp/ippan/about/(同)
- こども家庭庁「乳幼児健診に関する取組み」(母子保健法第12条) https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/nyuyojikenshin(同)
- 文部科学省「健康診断マニュアル」(学校保健安全法にもとづく健康診断) https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1383847.htm(同)
- Arblaster GE, et al. Patient perspectives on their outcomes from strabismus surgery undertaken for psychosocial reasons. Eye (London), 2024. PMID: 38907014


