
斜視手術は保険適用? 年齢別の自己負担割合と費用が変わる点
斜視について、症状・相談先・治療の選択肢・費用や手続きを一般向けに整理したコラムです。
手術を勧められた、あるいは選択肢として説明された。そのとき次に浮かぶのが「いくらかかるのか」だと思います。金額は状態や医療機関によって変わるため、この記事では実額を扱いません。代わりに、公的医療保険のしくみと、費用が変わる要素を整理します。どこを確認すれば自分の場合の見通しが立つのか、という順番でお読みください。
- 公的医療保険の診療は、診療の必要があると認められる病気やけがに対して行うものと定められています。
- 窓口で払う割合は年齢と所得で決まり、就学前は2割、就学後から69歳までは3割です。
- 入院か日帰りか、麻酔の種類によって、かかる費用は変わります。
斜視の手術と公的医療保険
斜視の手術にいくらかかるかは、公的医療保険で窓口に支払う割合と、手術の受け方によって変わります。窓口で支払うのは、かかった医療費のうち自己負担割合にあたる分です。
公的医療保険の診療は、医師として診療の必要があると認められる病気やけがに対して、正確な診断をもとに、患者の健康の保持増進のうえで妥当適切に行うものと定められています。また、診療にかかる費用の額は、厚生労働大臣が定めるところにより算定することとされていて、医療機関が独自に決めるものではありません。
保険診療の対象になるかどうか
斜視によって現れる状態としては、二つにものが見える、両目で見ようとするとはっきり見えない、両眼視機能(りょうがんしきのう=立体感や奥行き感を感じ取る働き)が低下する、といったものが挙げられています。診察では、検査の結果とあわせてこうした状態が確かめられます。
該当するかどうかは、検査の結果と診察をもとに医師が判断するもので、この記事で線引きを示すことはできません。相談の時点で自分がどちらに当たるかを見分ける方法もありません。
公的医療保険の対象外になる可能性について
医療行為であっても、治療中の病気やけがに対するものではないもの(予防接種、美容形成〔しみとり等〕)は、療養の給付とは別に費用を徴収できるものの例として挙げられています。
公的医療保険の対象になるかどうかは、この記事では線引きを示すことができません。対象外になる場合は全額が自己負担になるため、その可能性があるかどうかは診察の場で確かめる項目です。
ここで気をつけたいのは、「見た目が気になっている」ことと「治療上の必要がない」ことは、同じではないという点です。見た目が気になって相談した人にも、見え方の負担が重なっていることがあります。どちらに当たるかを自分で切り分けてから相談する必要はありません。この考え方は大人の斜視の見た目についての記事で詳しく扱っています。
自己負担割合は年齢で決まる
公的医療保険で窓口に支払う割合は、年齢と所得によって決まっています。斜視の手術に限った特別な割合はなく、他の診療と同じ区分が使われます。
就学前の子ども
義務教育就学前は2割です。ただし多くの自治体が独自に子ども医療費の助成を行っており、実際に窓口で支払う額はこの割合よりも小さくなることがあります。自治体の助成については医療費助成と高額療養費の記事にまとめています。
小学生から69歳まで
義務教育就学後から69歳までは3割です。中学生、高校生、成人はいずれもこの区分に入ります。ここでも、自治体によっては高校生年代までの医療費助成が行われている場合があり、住んでいる地域によって窓口で払う額は変わります。
70歳以上
70歳から74歳までは2割、75歳以上は1割です。ただし現役並み所得者はいずれも3割で、75歳以上のうち現役並み所得者以外の一定所得以上の方は2割です(令和4年10月1日から)。どの区分に当たるかは、加入している健康保険から通知される負担割合で確認できます。
費用が変わる要素
同じ「斜視の手術」でも、実際にかかる費用には幅があります。金額そのものは医療機関で確認する項目ですが、何によって変わるのかを知っておくと、確認するときの質問が具体的になります。
日帰りか入院か
日帰りで行う場合と入院を伴う場合とでは、かかる費用が変わります。入院すると、手術そのものの費用に加えて、入院中の医療にかかる費用が加わります。入院日数も費用に関わります。
また、入院を伴う場合は、高額療養費制度が関係しやすくなります。窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合に、その超えた額が支給される仕組みで、上限額は年齢や所得に応じて定められています。詳しくは医療費助成と高額療養費の記事で扱っています。
全身麻酔か局所麻酔か
麻酔の方法によっても費用は変わります。どちらの麻酔になるかは、年齢や状態、医療機関の体制によって異なります。
検査・眼鏡・通院にかかる費用
費用は手術当日だけで完結しません。手術の前には検査が行われ、術後も経過を見るための通院が続きます。眼鏡やプリズム眼鏡を使う場合はその費用もかかります。
小児弱視等の治療用眼鏡等については、健康保険の療養費として支給を受けられる仕組みがあります。この点も医療費助成と高額療養費の記事にまとめています。
手術費用のほかに考えておきたい支出
医療費以外にかかるものも、家計としては同じ「かかるお金」です。前もって並べておくと、見通しが立てやすくなります。
- 通院にかかる交通費:術前の検査、手術、術後の経過観察と、複数回の通院が生じます。遠方の医療機関を選ぶ場合は回数分の交通費がかかります
- 付き添いにかかる時間と費用:子どもの入院では付き添いの仕組みが医療機関によって異なります。きょうだいの預け先が必要になることもあります
- 仕事や学校を休む分:本人と付き添う家族の休みをどう確保するかは、日程を決める前に確かめておきたい点です
- 眼鏡の作り直し:手術の前後で度数が変わることがあり、眼鏡を作り直す場合の費用が生じます
費用について医療機関に確認しておきたいこと
費用は状態と医療機関によって変わるため、確認する側が項目を持っていると話が進みやすくなります。次の順に尋ねると整理しやすくなります。
- 保険診療になるかどうか:自分の状態が公的医療保険の対象になる見込みか。対象外になる可能性がある場合は、その理由も含めて確認します
- 入院の有無と日数、麻酔の方法:この二つで費用の幅が大きく変わります。日程の調整にも関わります
- 窓口での支払いのおおよその見込み:自分の自己負担割合を伝えたうえで尋ねます。加入している健康保険の負担割合は通知や保険証の情報で確認できます
- 手術以外にかかる費用:術前検査、術後の通院回数、眼鏡の作り直しの見込み
- 使える制度の手続き:入院する場合の高額療養費の手続き、子どもの場合の自治体の助成の使い方
この調査に回答した施設の一覧があります。回答していない施設にも斜視を診ている医療機関はあり、一覧は推薦ではありません。お住まいの地域の一覧はこちら(すべての医療機関は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)でも探せます)
よくある質問
斜視の手術に保険はききますか
公的医療保険の診療は、診療の必要があると認められる病気やけがに対して行うものと定められています。斜視の手術が対象になるかどうかは、検査の結果と診察をもとに判断されます。対象外になる場合は全額が自己負担になるため、個々の適用は診察の場で確認する項目です。
子どもと大人で自己負担割合は違いますか
違います。義務教育就学前は2割、就学後から69歳までは3割、70歳から74歳までは2割、75歳以上は1割です。現役並み所得者はいずれも3割で、75歳以上のうち現役並み所得者以外の一定所得以上の方は2割です。加えて、多くの自治体が子どもの医療費を独自に助成しているため、子どもが窓口で支払う額はこの割合より小さくなることがあります。
入院すると費用はどのくらい変わりますか
入院日数や医療機関によって変わるため、金額をお示しすることはできません。ただし変わる要素は決まっていて、手術そのものの費用に、入院中の医療にかかる費用が加わります。窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合は高額療養費制度の対象になるため、入院が決まった段階で手続きを確認しておくと支払いの見通しが立ちます。
高校生や中学生の場合はどうなりますか
公的医療保険の自己負担割合としては、就学後から69歳までと同じ3割の区分に入ります。ただし自治体の子ども医療費助成の対象年齢は自治体によって異なり、市区町村では18歳年度末までを対象とするところが最も多いという調査結果があります。お住まいの自治体の担当窓口で対象年齢と条件を確認してください。
民間の医療保険から、斜視の手術で給付金は出ますか
民間の医療保険(生命保険の医療特約などを含む)は、公的医療保険とは別の仕組みです。給付金が出るかどうかや金額は、加入している保険の契約内容で決まり、手術給付金の対象になる手術の範囲も契約ごとに定められています。手術が決まったら、保険証券や約款を確かめ、保険会社に手術名を伝えて問い合わせると、自分の場合の扱いを確かめられます。これから加入を考えている方は、告知の内容によって加入の条件が変わることがあるため、加入前に保険会社へ確かめてください。
参考にした資料
- 厚生労働省保険局医療課医療指導監査室「保険診療の理解のために【医科】(平成30年度)」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/dl/shidou_kansa_01.pdf(2026年9月10日閲覧)
- 厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」 https://www.mhlw.go.jp/content/000937919.pdf(同)
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html(同)
- 厚生労働省「小児弱視等の治療用眼鏡等に係る療養費の支給について」の一部改正について(令和元年9月18日 保発0918第8号) https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/190919_05.pdf(同)
- こども家庭庁「令和6年度 こどもに係る医療費の助成についての調査」 https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kodomoiryouhityousa-r6(同)
- 日本弱視斜視学会「外斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus2(同)


