
子どもの斜視の医療費助成と眼鏡の補助:高額療養費・治療用眼鏡の療養費のしくみ
斜視について、症状・相談先・治療の選択肢・費用や手続きを一般向けに整理したコラムです。
子どもの斜視で通院が続く、手術や入院の話が出た。そんなとき、使える公的な制度がいくつかあります。それぞれ運営しているところが違い、申請の窓口も違うため、まとめて調べようとすると混乱しがちです。この記事では、制度を三つに分けて整理し、どこに何を確認すればよいかを示します。金額は自治体や所得によって変わるため扱いません。
- 子どもの医療費に関わる公的制度は、大きく三つに分けて考えられます。
- 自治体の子ども医療費助成は、対象年齢も条件も自治体によって異なります。
- 9歳未満の治療用眼鏡は、健康保険の療養費支給の対象になる仕組みがあります。
子どもの医療費に関わる公的制度は3つに分けられる
制度が分かりにくく感じるのは、運営しているところが違うためです。窓口ごとに分けると、どこに聞けばよいかがはっきりします。
自治体の子ども医療費助成
市区町村が独自に行っている助成で、窓口で支払う子どもの医療費の全部または一部を助成する仕組みです。令和6年4月1日時点の調査では、すべての都道府県および市区町村がこどもに係る医療費の助成を実施していました。窓口は住んでいる市区町村です。
高額療養費制度
ひと月に医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合に、その超えた額の支給を受けられる仕組みです。家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないようにするための制度で、窓口は加入している健康保険(健康保険組合、協会けんぽ、市区町村の国民健康保険など)です。
治療用眼鏡の療養費支給(9歳未満)
9歳未満の子どもが、小児弱視等の治療のために医師の指示で眼鏡やコンタクトレンズを作った場合、健康保険から療養費として支給を受けられる仕組みがあります。こちらも窓口は加入している健康保険です。
自治体の子ども医療費助成の考え方
この助成がいちばん身近で、いちばん地域差が大きい制度です。「うちの市ではこうだった」という話が、隣の市では当てはまらないことがあります。
対象年齢と所得制限は自治体で異なる
令和6年4月1日時点の調査では、都道府県のレベルでは通院が就学前まで、入院が中学生までを対象とするところが最も多く、市区町村のレベルでは通院・入院ともに18歳年度末(高校生年代まで)を対象とするところが最も多いという結果でした。同じ「子ども医療費助成」という名前でも、対象になる年齢の幅がこれだけ違います。
年齢のほかに、保護者の所得による制限や、窓口での一部自己負担の有無も自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の担当窓口で確認する項目です。
窓口で確認する項目
問い合わせるときに、次の項目を順に尋ねると必要な情報がそろいます。
- 対象になる年齢(通院と入院で違う場合があります)
- 所得による制限の有無
- 窓口での一部自己負担の有無
- 医療証の交付を受ける手続きと、必要な書類
- 医療証を忘れた場合や他の自治体で受診した場合の、払い戻しの手続き
高額療養費制度のしくみ
高額療養費制度の上限額は、年齢や所得に応じて定められています。所得の区分ごとに上限が決まっているため、同じ入院でも世帯によって上限額は変わります。
令和8年8月からの制度では、70歳未満で年収が約370万円から約510万円の方が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円までに抑えられる、という例が示されています。これは制度上の計算例で、実際の額は所得の区分と医療の内容によって変わります。
あわせて知っておきたい仕組みが二つあります。多数回該当は、直近12か月の間に高額療養費に該当した月が3か月以上ある場合、4か月目以降の上限額がさらに軽減されるものです。もう一つの年間の上限は令和8年8月から設けられ、月ごとの自己負担額が積み上がって年間の上限額に達した後は、それ以上の医療費について還付を受けられます(年間は8月から翌年7月までで数えます)。なお厚生労働省のページでは、令和9年8月からさらに所得区分を細分化することと、年収200万円未満の方の多数回該当の金額を引き下げることも示されています。上限額は見直しが続いているため、手続きの前に加入している健康保険で最新の額を確認してください。
限度額適用認定証(マイナ保険証での手続きを含む)
あとから払い戻しを受ける形ではなく、窓口での支払いをはじめから上限額までにとどめる方法があります。平成24年4月から、限度額適用認定証などを提示すれば、月ごとの上限額を超える分を窓口で支払う必要はなくなりました。この取扱いを受けるには、マイナ保険証を利用するか、事前に「限度額適用認定証(認定証)」を入手しておく必要があるとされています。入院の日程が決まった段階で加入している健康保険に手続きを確認しておくと、いったん大きな額を立て替えずに済みます。
入院を伴う場合との関係
高額療養費は、窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合に、その超えた額が支給される仕組みです。入院を伴う場合は、ひと月の医療費がまとまって発生します。
なお、自治体の子ども医療費助成では、健康保険負担分を除いた自己負担額が返金されることがあります。二つの制度の関係は、住んでいる自治体と加入している健康保険で確認する項目です。
治療用眼鏡・プリズム眼鏡の費用について一般に言われていること
9歳未満の子どもが小児弱視等の治療のために医師の指示で作った眼鏡やコンタクトレンズは、健康保険の療養費の対象になります。療養費として支給される額は、国の告示(補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準)に定められた装具の価格の100分の106に相当する額を上限とし、実際に作成または購入に要した費用の範囲内とされています。つまり、かかった費用の全額ではなく、上限のある仕組みです。日本眼科医会の案内では、対象年齢は9歳未満で、対象になるのは医師が必要と認めた小児の弱視・斜視・先天性白内障術後の屈折矯正の治療用とされ、アイパッチとフレネル膜プリズムは対象外です。
申請にあたって用意するものとして、眼鏡等の名称・種類・費用額が記載された領収書、医師の「眼鏡等作成指示書」の写し、指示書に検査結果が明記されていない場合は視力等の検査結果の写しが挙げられています。作る前に保険医(眼科医)の作製指示書(眼鏡処方箋)があること、領収書に眼鏡等の名称・種類・費用額が記載されていることが、あとの手続きに関わります。
9歳以上の場合や、大人がプリズム眼鏡を作る場合の扱いは別に考える必要があり、加入している健康保険の窓口で確認する項目です。
医療費が続く家庭で確かめておきたいこと
こども医療費助成については、その有無、対象年齢、所得制限の有無、助成内容等が市区町村によって異なります。ほかに使える助成があるかどうかも含めて、お住まいの市区町村の担当課で確認する項目です。
通院が長く続く場合は、次の点をあわせて確認しておくと、支払いの見通しが立ちやすくなります。
- 直近12か月に高額療養費に該当した月がある場合の、多数回該当の適用
- 1年間(8月から翌年7月まで)で自己負担が積み上がった場合の、年間の上限
- 市区町村の子育て・福祉の窓口で案内している、家庭の状況に応じた助成
民間の医療保険や共済については、契約ごとに条件が異なるため、この記事では扱っていません。加入されている場合は、契約先に直接ご確認ください。
申請の前に手元にそろえておくと役立つ書類
制度ごとに窓口が違うため、共通して使うものを先にまとめておくと手続きが早く進みます。
- 健康保険の資格を確認できるもの:マイナ保険証、または加入している健康保険から発行された書類
- 自治体の医療証:子ども医療費助成の医療証
- 領収書と診療明細書:日付ごとに保管します。治療用眼鏡の場合は、眼鏡の名称・種類・費用額が記載された領収書
- 医師が書いた指示書や診断書:治療用眼鏡の「眼鏡等作成指示書」など。写しを取っておくと複数の窓口で使えます
- 振込先の口座が分かるもの:あとから支給を受ける形の手続きで使います
この調査に回答した施設の一覧があります。回答していない施設にも斜視を診ている医療機関はあり、一覧は推薦ではありません。お住まいの地域の一覧はこちら(すべての医療機関は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)でも探せます)
よくある質問
子どもの斜視の治療費はどこに相談すればよいですか
制度によって窓口が分かれます。子ども医療費助成はお住まいの市区町村、高額療養費と治療用眼鏡の療養費は加入している健康保険(健康保険組合、協会けんぽ、市区町村の国民健康保険など)が窓口です。医療の内容そのものにかかる費用は、受診している医療機関で確認する項目になります。
子ども医療費助成は何歳まで使えますか
自治体によって異なります。令和6年4月1日時点の調査では、市区町村のレベルでは通院・入院ともに18歳年度末までを対象とするところが最も多いという結果でした。所得による制限や窓口での一部自己負担の有無も自治体で異なるため、お住まいの市区町村の担当窓口で確認してください。
入院前に何を手続きしておけばよいですか
加入している健康保険に、限度額適用認定証などの手続きを確認しておく方法があります。これを提示すれば、月ごとの上限額を超える分を窓口で支払う必要がなくなります。この取扱いを受けるには、マイナ保険証を利用するか、事前に認定証を入手しておく必要があるとされています。あわせて、お住まいの自治体の子ども医療費助成が入院にどう適用されるかも確認しておくと、支払いの見通しが立ちます。
治療用の眼鏡の費用は戻りますか
9歳未満の子どもが小児弱視等の治療のために医師の指示で作った眼鏡やコンタクトレンズは、健康保険の療養費の対象になります。ただし全額ではなく、国の告示に定められた装具の価格の100分の106に相当する額を上限とし、実際に要した費用の範囲内とされています。金額は加入している健康保険の窓口で確認してください。
参考にした資料
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html(2026年9月10日閲覧)
- 厚生労働省「小児弱視等の治療用眼鏡等に係る療養費の支給について」の一部改正について(令和元年9月18日 保発0918第8号) https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/190919_05.pdf(同)
- 日本眼科医会「小児弱視等の治療用眼鏡等に関する療養費の支給について」 https://www.gankaikai.or.jp/school-health/detail2/__icsFiles/afieldfile/2025/03/11/20250311_shouni1.pdf(同)
- 全国健康保険協会「治療用装具・治療用眼鏡等」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/medical_expenses/002/index.html(同)
- こども家庭庁「令和6年度 こどもに係る医療費の助成についての調査」 https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kodomoiryouhityousa-r6(同)
- 厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」 https://www.mhlw.go.jp/content/000937919.pdf(同)


