眼科の診察室で、白衣の医師が机の上の眼球の模型を指しながら、女性に説明している

斜視の手術方法とは?目を動かす筋肉の位置を整えるしくみと手術の流れ

斜視について、症状・相談先・治療の選択肢・費用や手続きを一般向けに整理したコラムです。

「斜視の手術をすすめられた」「手術を考え始めた」とき、目のどこに何をするのかが分からず、身構えてしまう方もいらっしゃると思います。斜視の手術は、目を動かす筋肉が眼球についている位置をずらしたり、筋肉の長さを調整したりして、左右の目の向き(眼位〔がんい〕)を整えることを目指す手術です。この記事では、目を動かす筋肉のしくみと、手術の主な方法、手術を決めるまでの流れを整理します。

  • 斜視の手術は、目の中ではなく、眼球の外側についている「目を動かす筋肉」に対して行う手術です。
  • 方法は「働きを弱める」「働きを強める」「引っぱる向きを変える」の3つの考え方に分けると、全体がつかみやすくなります。
  • どの目の、どの筋肉に、どの方法を、どのくらい行うかは、目の位置と動きを測る検査の結果をもとに担当医が決めます。

斜視の手術は、目を動かす筋肉の位置を整える手術

斜視の手術は、目を動かす筋肉を移動させて、眼位を整える手術です。目を動かす筋肉は、白目の表面をおおう薄い膜(結膜〔けつまく〕)の下にあり、手術ではこの筋肉を扱います。黒目(角膜)や目の中のレンズ(水晶体)に手を加える手術とは、手術をする場所が違います。

目を動かす6本の筋肉(外眼筋)

眼球の外側には、目を動かす筋肉が6本ついています。これを外眼筋(がいがんきん)と呼びます。上下左右に引っぱる4本のまっすぐな筋肉(上直筋・下直筋・内直筋・外直筋)と、斜めに走る2本の筋肉(上斜筋・下斜筋)です。左右の目のこれらの筋肉がつり合いをとって働くことで、両目が同じ方向を向きます。

両目を正面から見た図。向かって左の右目に、上直筋・下直筋・内直筋・外直筋・上斜筋・下斜筋の6本の筋肉の名前がついている。向かって右は左目
目を動かす6本の筋肉。両目を正面から見た図で、向かって左が右目(筋肉の名前つき)、右が左目です。

主な手術の方法

手術の方法は、筋肉に対して何をするかによって、大きく3つの考え方に分けられます。

考え方 代表的な方法 何をするか
働きを弱める 後転術(こうてんじゅつ) 筋肉が眼球についている位置を、いまより後ろへずらす
働きを強める 短縮術(たんしゅくじゅつ)・前転術(ぜんてんじゅつ) 筋肉を短くして縫い直す/筋肉がつく位置を前へ寄せる
引っぱる向きを変える 筋移動術(きんいどうじゅつ)など 筋肉がつく位置を別の場所へ移し、引っぱる方向を変える

手術の名前は「後転法」「短縮法」のように「法」をつけて呼ばれることもあります。

後転術:筋肉のつく位置を後ろへずらす

筋肉が眼球についている位置を後ろへずらすと、その筋肉が目を引っぱる力が弱まります。たとえば目が外側へずれている場合に、目を外側へ引っぱる筋肉の働きを弱める、という考え方です。

短縮術・前転術:筋肉の働きを強める

短縮術は筋肉を短くして縫い直す方法、前転術は筋肉がつく位置を前へ寄せる方法で、どちらも筋肉が目を引っぱる力を強めます。1つの目で、ある筋肉に後転術を、反対側の筋肉に短縮術を組み合わせる方法(後転短縮術)もあります。

同じ眼球の模式図を3つ並べ、もとの位置、筋肉のつく位置を後ろへずらした後転術、筋肉を短くして縫い直した短縮術を、引っぱる力の矢印の太さで示した図
後転術と短縮術のしくみ。どちらの方法をどの筋肉に行うかは、検査の結果をもとに決められます。

上下のずれ・ねじれに対する手術

上下のずれには上下に動かす筋肉や斜めに走る筋肉(斜筋)の手術が、黒目を中心に回るような目のねじれ(回旋〔かいせん〕)には斜筋の手術などが選ばれることがあります。目を動かす神経の麻痺による斜視でも、筋肉の位置を移す手術が考えられることがあります。

手術のあとに糸で微調整する方法(調節糸法)

手術のあとの目の位置に合わせて、筋肉を動かす量をもう一度調整できるようにしておく方法を、調節糸法(ちょうせついとほう)と呼びます。手術の効果が予想しにくい場合などに選ばれることがある一方、局所麻酔で調整することが難しい小さなお子さんなどには向かないとされています。

片目だけか、両目か

ずれているように見えるのが片方の目でも、手術が片目だけになるとは限りません。1つの目で後転術と短縮術を組み合わせる方法もあれば、左右の目の同じ筋肉にそれぞれ後転術を行う方法もあります。どちらの目の、どの筋肉に手術をするかは、ずれの向きや大きさ、目の動きなどをもとに決められます。

手術の量は、目の位置を測る検査をもとに決められる

どの筋肉を、どのくらい動かすか(手術の量)は、目の位置(眼位)と目の動き(眼球運動)を測る検査の結果をもとに決められます。同じ名前の手術でも、手術の量は一人ひとり異なります。

また、斜視の種類によっては、手術のあとに物が二つに見える(複視〔ふくし〕)ことがあるため、手術の前にその可能性を確かめ、手術が難しいと判断されることもあります。

手術を決めてから当日までの流れ

手術を考え始めてから当日までは、おおむね次のような順に進みます。

  1. 相談:目の状態と、手術で目指すこと(目の位置・両目で見る力・二重に見えることへの対応)を担当医と確かめます
  2. 検査:目の位置や動き、視力などを測ります。斜視によって弱視が起きている場合は、片目を隠す方法などで先に視力を育ててから手術を行うことがあります
  3. 方法と量の説明:どの目の、どの筋肉に、どの方法を、どのくらい行うかの説明を受けます
  4. 手術の準備:麻酔の方法や、日帰りか入院かの説明を受けます。これらは、年齢や目の状態、医療機関によって異なります
  5. 手術

目を動かす神経の麻痺による斜視では、まず麻痺の原因を調べ、その病気の治療を行うことが第一になります。原因の治療を受けながら経過を見るうちに自然に軽くなることもあるため、発症から6か月ほどたっても二重に見えることが続く場合に、手術を考えることがあります。日本弱視斜視学会は、急に物が二重に見えるようになったときは命にかかわる病気が隠れていることもあるため、すぐに眼科を受診するよう呼びかけています。

手術の費用については、斜視手術は保険適用? 年齢別の自己負担割合と費用が変わる点にまとめています。

相談、検査、方法と量の説明、準備、手術の5枚のカードを左から右へ矢印でつないだ図
手術を考え始めてから当日までの流れ。

手術以外の方法との関係

斜視の治療には、手術のほかに、眼鏡、プリズム眼鏡、視能訓練、ボツリヌス毒素の注射などがあります。調節性内斜視のように、遠視の眼鏡で目の位置が整うものもあります。どれが検討されるかは、斜視の種類やずれの大きさによって変わります。それぞれの方法は、斜視の治し方は?治療法一覧:眼鏡・プリズム・訓練・注射・手術で整理しています。

手術について相談するときに聞いておくと話が進みやすいこと

  1. どの目の、どの筋肉に、どの方法を行うのか:片目か両目か、方法の名前も合わせて聞いておくと、説明を思い出しやすくなります
  2. その方法を選ぶ理由:ずれの向きや大きさ、目の動きとどう関係しているのか
  3. 手術で目指すこと:目の位置なのか、両目で見る力なのか、二重に見えることへの対応なのか
  4. もう一度手術が必要になることはあるか:そのときの考え方も聞いておくと、見通しを立てやすくなります
  5. 麻酔の方法、日帰りか入院か、費用:生活の予定を立てるうえで必要になります

この調査に回答した施設の一覧があります。回答していない施設にも斜視を診ている医療機関はあり、一覧は推薦ではありません。お住まいの地域の一覧はこちら(すべての医療機関は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)でも探せます)

よくある質問

斜視の手術では、目を取り出すのですか

眼球を外に取り出す手術ではありません。眼球の外側についている、目を動かす筋肉に対して行う手術です。この筋肉は、白目の表面をおおう薄い膜(結膜)の下にあります。

斜視の手術で視力は良くなりますか

斜視の手術は目の向きを整えることを目指す手術で、視力を上げるための手術ではありません。斜視によって弱視が起きている場合は、手術とは別に視力を育てる治療が行われます。弱視との関係は、斜視と弱視は別のもの。関係と、視力が育つ時期の目安で整理しています。

手術は1回で終わりますか

1回の手術で終わることもありますが、手術のあとに目の位置が戻り、もう一度手術を行うこともあります。外斜視の手術では、手術のあとに再び外斜視になる「もどり」がしばしばみられるため、手術の時期を含めて慎重に検討されます。米国では、斜視の手術のあとの再手術の割合を調べた大規模な調査もあります。

大人になってからでも手術を受けられますか

大人の斜視でも、目の位置を整えるために手術が行われます。日本で2021年度の斜視の手術について行われた全国調査(回答した施設での集計)では、手術を受けた人のうち、20歳以上が48.2%、60歳以上が約17%でした。

参考にした資料

この調査結果の前提と注記

斜視手術件数 全国調査(2023–2025)/調査結果と施設の一覧。掲載内容は予告なく更新される場合があります。最終更新日:2026年11月4日

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