
斜視と運転免許|取得・更新の視力・視野の基準と相談先
斜視について、症状・相談先・治療の選択肢・費用や手続きを一般向けに整理したコラムです。
物が二重に見える日がある。片目を閉じると一つに戻る。そんな状態で更新のはがきが届くと、「検査に通るのか」「そもそも運転していいのか」という二つの心配が同時に来ると思います。この記事では、更新のときに確かめられる目の項目が何なのかを制度の側から整理し、そのうえで確認先の考え方を示します。個別に運転できるかどうかは、この記事では扱えません。
- 適性試験のうち目に関わるのは、視力・色彩識別能力・深視力です(視野は視力の基準のなかで出てきます)。
- 深視力の検査があるのは、大型・けん引・第二種などの免許です。
- 目の状態の相談先として、安全運転相談窓口(#8080)があります。
運転免許の更新で確かめられる目の項目
免許の更新や取得のときに行われる検査を適性試験といいます。基準は道路交通法施行規則第23条に定められており、科目は視力、色彩識別能力、深視力、聴力、運動能力です。このうち目に関わるのは、視力、色彩識別能力、深視力の3つで、視野は視力の科目のなかで、片眼の見え方が一定に届かない場合の基準として出てきます。この記事では、視力・視野・深視力の3点を取り上げます。免許の種類によって、求められる数値も、行われる検査の種類も変わります。
視力(両眼・片眼)
視力は、裸眼または矯正視力で測られます。免許の区分ごとの基準は次のとおりです。
- 普通免許・大型特殊免許など:両眼で0.7以上、かつ片眼それぞれ0.3以上
- 大型免許・中型免許・準中型免許・けん引免許・第二種免許:両眼で0.8以上、かつ片眼それぞれ0.5以上
- 原付免許・小型特殊免許:両眼で0.5以上
二輪の免許など、ここに挙げていない区分もあります。自分の免許がどの区分にあたるかは、お住まいの都道府県警察のページで確かめられます。
視野
視野(しや=目を動かさずに見える範囲)は、視力が両眼・片眼の基準に届かない場合に出てくる項目です。普通免許などでは、片眼の視力が0.3に満たない場合、または片方の目が見えない場合に、もう一方の目の視野が左右150度以上あり、かつ視力が0.7以上であることが基準とされています。原付免許・小型特殊免許では、片方の目が見えない場合に、視野が左右150度以上で視力が0.5以上とされています。
両眼・片眼の視力が基準を満たしている場合、更新の窓口で視野の検査が行われるわけではありません。
深視力(奥行きを見る検査・一部の免許)
深視力(しんしりょく)は、奥行きの距離感を確かめる検査です。三桿法(さんかんほう)の奥行知覚検査器を使い、2.5メートルの距離で3回検査して、その平均誤差が2センチ以下であることが基準とされています。
深視力の検査があるのは、大型免許・中型免許・準中型免許・けん引免許・第二種免許です。普通免許の更新では行われません。
斜視や二重に見える症状と、これらの基準の関係
ここまでの3点を並べると分かるとおり、目について測られるのは、見える細かさ(視力)、見える範囲(視野)、奥行きの距離感(深視力)です。二重に見えること自体を測る項目は、基準に含まれていません。
一方で、深視力は奥行きの距離感を確かめる検査です。恒常性外斜視では片目でのみ生活しており、立体視や3Dの感覚は消失します。斜視や複視(ふくし=一つの物が二つに見えること)があるときにこの検査がどう扱われるかは、検査を受ける窓口で確かめる項目です。
片目の視力で基準を満たす場合の扱い
普通免許などでは、片眼の視力が0.3に満たない場合や、片方の目が見えない場合に、もう一方の目の視力と視野で基準が定められています。視野が左右150度以上、視力0.7以上です。片目だけで基準を満たすという考え方が制度のなかにある、ということです。弱視をともなう斜視で片眼の視力が0.3に届かない場合も、この基準にあたります。
ただしこれは「片眼の視力が届かない場合・片目が見えない場合」の基準であって、両目とも基準を満たしていて二重に見える場合の基準ではありません。片目を閉じれば楽になるという日常の工夫と、制度上の扱いは別のものです。実際にどう扱われるかは、検査を受ける窓口の判断になります。
眼鏡・プリズム眼鏡をかけて検査を受けること
視力の検査は裸眼または矯正視力で行われるため、ふだん使っている眼鏡やコンタクトレンズをかけたまま受けることになります。プリズム眼鏡(光を曲げて二重に見えるのを軽くする眼鏡)を装用した状態で検査を受けられるか、免許にどのような条件が付くかは、公開されている基準からは読み取れません。ここは受ける窓口に確かめる項目です。
二重に見えるときの運転について一般に言われていること
免許の基準を満たしているかどうかとは別に、その日の体調で運転できる状態かどうか、という論点があります。道路交通法第66条は、過労、病気、薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある状態での運転を禁じています。基準を満たして免許を持っていることと、いま運転してよい状態であることは、別々に考えられているということです。
間欠性外斜視では、疲れているとき、体調が悪いとき、眠いときに外斜視が出やすくなります。起床直後や明るい戸外でも起こりやすいのが特徴です。
車間距離や駐車のときの前後の感覚は、奥行きの情報を使う場面です。急に二重に見えるようになった場合は原因を調べる検査が行われることがあり、症状が出ている状態を診察で確かめてもらうことが次の判断の材料になります。
更新前に確かめておきたい相談先
「更新できるか」という問いは、制度の側と医療の側の両方に関わります。それぞれに確認先があります。
運転免許センターの安全運転相談
警察には、安全運転相談窓口という制度があります。高齢のドライバーとその家族のほか、身体の障害や一定の症状を呈する病気等による症状のため自動車等の安全な運転に支障のある方が対象とされています。専用相談ダイヤルは「♯8080」で、発信地を管轄する都道府県警察の窓口につながります。
受付は原則として平日の執務時間内で、通話料は利用者の負担です。身体の障害や病気の症状が運転に及ぼす影響は個別具体のケースによりまちまちで、運転免許に一定の条件を付すことにより補うことができる場合や、治療により回復する場合等があるとされています。更新の当日を待たず、事前に相談しておくという使い方ができます。
診察で伝えておきたいこと
診察の場では、次のような情報が状況を伝えるのに役立ちます。
- 二重に見えるのはいつからか、急に始まったのか徐々にか
- 横にずれて見えるのか、上下にずれて見えるのか
- 出やすい時間帯と場面(夕方、疲れたとき、遠くを見たとき、近くを見たとき)
- 片目を閉じると一つに戻るかどうか
- 運転している免許の種類と、深視力の検査があるかどうか
- 更新の期限がいつか
免許の種類と更新の時期を伝えておくと、検査や治療の予定を組むときの前提として共有されます。
通勤や仕事で運転が必要な方が整理しておきたいこと
運転が仕事に直結している場合、判断の材料は目の状態だけではなくなります。次の3つを分けて整理しておくと、話が進みやすくなります。
- 期限:更新の期限と、症状が出始めた時期。更新前に検査や治療の予定が入るかどうかで段取りが変わります
- 免許の区分:深視力の検査がある区分か、視力だけの区分か。仕事用と私用で免許が別なら、それぞれについて確かめます
- 職場との共有の範囲:どこまでをいつ伝えるか。診断書が求められる職場もあるため、必要な書類を先に確認しておくと手戻りが減ります
この記事で扱えるのは、公開されている基準と相談先までです。個別に更新できるかどうかは、検査を受ける窓口と、診察を受けた医療機関で確かめることになります。
この調査に回答した施設の一覧があります。回答していない施設にも斜視を診ている医療機関はあり、一覧は推薦ではありません。お住まいの地域の一覧はこちら(すべての医療機関は、厚生労働省の医療情報ネット(ナビイ)でも探せます)
よくある質問
斜視があると運転免許は取れませんか
適性試験の科目は視力、色彩識別能力、深視力、聴力、運動能力で、斜視があることそのものを不可とする定めは、公開されている基準には見当たりません。普通免許などの視力の基準は、両眼で0.7以上かつ片眼それぞれ0.3以上です。実際の可否は検査を受けた窓口の判断になります。
深視力の検査はどの免許で行われますか
大型免許・中型免許・準中型免許・けん引免許・第二種免許で行われます。三桿法の奥行知覚検査器により、2.5メートルの距離で3回検査した平均誤差が2センチ以下であることが基準です。普通免許の更新では深視力の検査は行われません。
片目が見えない場合でも更新できますか
片方の目が見えない場合の基準が定められています。普通免許などでは、片眼の視力が0.3に満たない場合も含めて、もう一方の目の視野が左右150度以上あり、視力が0.7以上であることとされています。原付免許・小型特殊免許では、片方の目が見えない場合に視野が左右150度以上で視力0.5以上です。あてはまるかどうかの確認は、検査を受ける窓口で行われます。
更新前に相談できる窓口はありますか
警察の安全運転相談窓口があります。身体の障害や一定の症状を呈する病気等による症状のため自動車等の安全な運転に支障のある方も対象とされており、専用相談ダイヤル「♯8080」から、発信地を管轄する都道府県警察の窓口につながります。受付は原則として平日の執務時間内で、通話料は利用者の負担です。
参考にした資料
- 道路交通法施行規則(昭和三十五年総理府令第六十号)第二十三条(適性試験) https://laws.e-gov.go.jp/law/335M50000002060(e-Gov法令検索・2026年9月10日閲覧)
- 道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第六十六条(過労運転等の禁止) https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105(同)
- 警察庁「安全運転相談窓口について」 https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/conferennce_out_line.html(2026年9月10日閲覧)
- 警察庁「運転免許の更新等の手続」 https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/index.html(同)
- 警察庁「薬の副作用と運転について」 https://www.npa.go.jp/koutsuu/menkyo/fukusayou_unten.pdf(同)
- 大阪府警察「免許の種類と視力等の基準」 https://www.police.pref.osaka.lg.jp/kotsu/untenmenkyo/5952.html(同)
- 千葉県警察「適性試験(検査)の合格基準について」 https://www.police.pref.chiba.jp/menkyoka/licence_consul-pass.html(同)
- 静岡県警察「運転免許試験の適性試験」 https://www.pref.shizuoka.jp/police/shinse/menkyo/shiken/tekiseishiken.html(同)
- 日本弱視斜視学会「外斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus2(同)
- 日本弱視斜視学会「内斜視」 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus3(同)


